リアルドラゴン桜プロジェクト

自由ヶ丘学園高校

Vol04
2021.9.8
社会の変化を見据え、進化する授業
新時代で生き抜く力を身につけよう

前回の記事でご紹介したとおり、自由ヶ丘学園高校では学校改革を進めています。田中校長先生はその理由を、「これからの社会は大きく変わります。だから生徒は、新しい時代を生き抜くための力を身につける必要があります。そのためには、学校改革が不可欠なのです」と語ってくれました。

そこで今回は、学校改革の中心とも言える特徴的な授業をご紹介します。ひとつはすでに始まっている“STEAM教育”。そしてもうひとつは、来年度から始まる“ILA国際教養コース”の授業です。担当する先生の想いと、実際の授業の様子をお届けします。

※STEAM教育とILA国際教養コースの概要は、以下で確認することができます
前回記事
学校ホームページ

STEAM教育の最終目標は
自立して幸せになること

自由ヶ丘学園高校のSTEAM教育を推進する、教育戦略室長の今井先生にお話をうかがいました。今井先生はどのような想いで、STEAM教育を推進しているのでしょうか?

Q:あらためて、STEAM教育を取り入れた目的を教えて下さい
今井先生:これからの社会は、大きく変わります。世界では新しい技術や仕事が次々と生まれ、国際的な共同作業が行われています。そこで求められるのは、人の幸せにつながるような提案をする力、その実現のために仲間を集めて協力しながら進む力、現状を正しく把握するための基礎的な知識力です。

本校のSTEAM教育は、生徒がこうした力をつけ、“新しい価値”を創出できるようになることをめざしています。どんな社会になっても、自分の力で幸せをつかむことができるようになることが、最終目標だと考えています。

Q:授業の特徴を教えて下さい
今井先生:授業では課題設定、事実に基づいた議論の進め方、情報技術を使った解決方法の共創など、“新しい価値”を創出する方法を学びます。また生徒の関心にあわせて、企業や大学と連携したプロジェクト、英語でのディスカッションやプレゼンテーションも実施しています。

Q:企業や大学と連携したプロジェクトが、とても多い理由は何でしょうか?
今井先生:私のこれまでのキャリアが影響しているのかもしれません。もともとコンサルタントをしていたので、大手企業の多くの方と知り合うことができました。また私は、慶応義塾大学とイリノイ大学で修士課程を修了し、東京大学大学院で博士課程を修了しました。そのため、多くの大学に知人がいます。こうした世界中の方々と情報交換をする中で、「一緒にやりましょう」となるケースがほとんどです。現在も、ある大手自動車メーカーと連携した授業が進んでいます。

Q:STEAM授業を受けた生徒には、どのような変化がみられますか?
最初にみられた変化は、積極的に発言するようになったことです。入学した時はおとなしい普通の生徒だったのに、いまでは自分のアイデアを自分の言葉ではきはきとプレゼンテーションするようになった生徒が数多くいます。入学時に、多くの生徒は議論の進め方を知りません。ですから最初は、議論のやり方から教えます。他者の発言を否定しないなど、議論のマナーを学ぶうちにどんどん活発に発言するようになりました。

入学から4ヶ月たった時に、生徒にSTEAM授業の感想を聞くと、次のような答えが返ってきました。
・社会に必要な能力が身につき、とても嬉しい
・人生で役立つことを勉強できた
・自分と違う考えの人の意見を取り込む方法がよくわかった

生徒の成長を感じることができ、とても嬉しく思っています。

最後に、今井先生のSTEAM授業にかける想いを聞きました。
今井先生は「私がコンサルタントで得たことを、実践的にすべて教えるつもりでいます」と、温かい眼差しで想いを語ってくれました。

教育戦略室長 今井先生
慶應義塾大学理工学部卒業 / 慶應義塾大学大学院理工学研究科物理学専攻 修士課程修了 / イリノイ大学コンピュータサイエンス科 修士課程修了 / 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了
※感染防止に十分配慮し、写真撮影時のみマスクを外しています

自由な発言が飛び交う
STEAM授業

実際に、STEAM授業の様子も取材することができました。担当するのは今井先生と門井先生、そしてアドバイザーのパトリック・ニュウエルさんです。新型コロナウイルスの感染対策で、生徒の半数が自宅からリモートで参加し、半数が登校して対面で授業を受けるというハイブリッド形式でおこなわれました。

授業内容は、マインドマップの作成でした。今井先生はマインドマップの作り方を説明すると、生徒たちにこう語りかけました。「なぜ、マインドマップを作ることが重要なのでしょう? この問いに正解はありません。思ったことを発言してください」。

教室にいる生徒たちは次々に手をあげ、リモート参加の生徒はチャットで意見を投稿します。
「夢の実現のために、何が関係しているかを可視化するため」
「自分の考えを整理することで、新たな夢を発見するきっかけになる」
などの意見が発表されました。

パトリックさんは満足そうな表情で、こう言いました。「素晴らしいですね。マインドマップは、仕事でも使います。私が企業の経営者と仕事をした時にも、とてもよく使いました。自分の考えを可視化することで考えがまとまり、新たなアイデアが生まれるからです」。

こうしてマインドマップ作りがはじまりました。テーマは“よりよい社会”です。生徒たちはChromebookで、自分の考えを書き込んでいきます。個人のワークが終了すると、今井先生はグループで議論するように促しました。生徒たちは机と椅子を思い思いに動かしてグループを作ると、意見交換をはじめます。どのグループでも活発に意見が飛び交い、「なるほど」「その視点は斬新だね」といった声が上がっていました。

最後は、各グループの発表です。発表された内容は、生徒がソフトを使ってまとめていきます。“よりよい社会”を中心にしたマインドマップには、環境・格差社会・新型コロナウイルス対策などの単語が並んでいきました。

今井先生は最後に、こう語りました。

「この時間は、マインドマップを作る練習をしました。今後は、自分のマインドマップを作っていきます。これはとても重要です。これからの2年間で、自分がやりたいテーマを探すことになるからです。将来やりたいことが明確になれば、充実した高校生活を送ることができます。また、大学の進路選択や、将来の職業選択にも役立ちます」。

「私の知人も、このプロセスを経て起業した人がいます。アメリカでは、マインドマップを作ることで自分のやりたいことを明確にし、その実現のために大学で何を学ぶかを決めるケースがよくあります。みなさんの将来にとって非常に大切で、しかも今しかできないことです。時間をかけて、じっくりと、深く考えていきましょう」。

自由ヶ丘学園高校のSTEAM授業では、高校1年生の時からマインドマップを使って自分の将来を考え、積極的に議論や発表をしていることがわかりました。教室には、まるで海外の学校のような、自由で積極的な空気が流れていたのが印象的でした。生徒たちはこの先、自分がやりたいテーマを見つけ、熱中してそのテーマに向き合っていくことでしょう。

自由な発想やアイデアが溢れ出るようにと、STEAM教室の壁は自分たちで塗り直した。壁に貼られたポスターは生徒が考えた授業のルールで、自分たちで作ったもの

国際性と知識・教養を身につけよう
新たに始まるILA国際教養コース

来年度から始まるILA国際教養コースは、これからの時代にふさわしい国際性と、知識・知恵を身につけた、教養のある人の育成を目的としています。新コース設立の背景や意図を、英語科担当のブレント・スズキ先生に聞きました。インタビューは英語でおこない、英文も併記します。

Q:なぜ、ILAコースを来年度から新設することになったのでしょうか?その背景や意図を教えて下さい。

スズキ先生:私たちの世界はよりグローバルで国際的になってきており、日本人が世界で成功するためには、英語だけでなく他の外国語も必要になってきます。これはビジネスの世界に限ったことではありません。様々な外国語によるコミュニケーションが、私たちの日常生活に浸透していくでしょう。ですから、コミュニケーションを主とした国際的な言語能力を身につける必要があります。ILA国際教養コースでは英語のほかに、フランス語・ドイツ語・中国語の外国語演習が用意されます。

また、多様な価値観を持つ世界中の人々が協働する時代では、しなやかな感性と適切な判断力が求められます。そのために、国境や文化・言語を超えて世界の人々と交流し、多様な価値観に触れる学びをおこないます。このコースは、できれば大学でより高いレベルで教えるべきことの入門コースにしたいと考えています。ですから、学生たちが「ああ、それについては少し読んだことがある。それはね…」と、少なくともリベラルアーツの世界的な問題について、ほんの少しでも知識を持ってもらえればと思っています。

Q: Why did you decide to start a new ILA course next year? Please tell us more about the background and purpose.

Mr. Suzuki: Our world is becoming more globalized and international, and in order for Japan to succeed on this global level, we need not only English but also other foreign languages. This is not unique to the business world. Communication in various foreign languages will surely permeate our daily lives. Therefore, it is necessary to acquire international language skills centered upon communication. In addition to English, the ILA International Liberal Arts Course offers foreign language exercises in French, German, and Chinese.

Also, in an era in which people from all over the world with diverse values collaborate, flexible sensitivities and appropriate judgement are necessary. To that end, we strive to interact with individuals from around the world and across national borders, cultures, and languages, while learning to experience a diversity of values. This course will hopefully be the introductory course to what is to be taught at a higher level in university. So, I'm hoping that the students can say, "oh yea, I read a little about that. It's about…" so that at least they have even just a little knowledge on a global issue in liberal arts.

Q:言語能力以外に、生徒がどのような能力を身につけることを目指していますか?

スズキ先生:クリティカル・シンキング(理由を問い、理解し、自分の言葉で表現すること)は、学習する上で非常に重要です。私はこの方法を、人生の早い時期に身につける必要があると考えています。幼い頃、私たちは親や先生に「どうして?」と、よく質問をします。しかし、ある時点でそのような質問をしなくなります。本やインターネットに頼り、自分で理解しようとしないため、試行錯誤するようになるのではないでしょうか。

また、私はPDCAサイクルを重視しています。多くの人は、どうしても“結果”を求めてしまいます。しかし、“どのようにやったのか?”ということの方が重要なのです。調べ物や勉強をしていると、“もっと情報を得たい”、“もっと良い方法を考えたい”と、意識せずにPDCAサイクルを回すことになります。この力が身につけば、それは素晴らしい知識につながるはずです。私は“結果”ではなく、その“プロセス”が一番大事だと考えています。

Q: What kinds of abilities do students aim to acquire other than language abilities?

Mr. Suzuki: Critical thinking (asking why, understanding, and putting in one’s own terms) is extremely important part of learning. I believe that this is something that needs to be learned from early on in life. When we are young, we often ask parents and teachers, "Why?" But at some point, we stop asking such questions. As a result of relying on books or the internet and not trying to understand something for yourself, it's more like a trial-and-error process.

Also, I attach great importance to the PDCA cycle. Many people inevitably seek “results”. But the question is, "How did you do it?" When you are researching or studying, you are going through the PDCA cycle without thinking "I want to get more information" or "I want to think of a better way". Once you can harness this power, it can lead to great knowledge. I believe that "process," not "result" is the most important thing of all.

Q:このコースを卒業した生徒には、将来どのようになっていてほしいですか?

スズキ先生:私が教えてきた多くの卒業生がリベラルアーツ系の大学に進学したように、私は彼らが“現実の世界”で提示される課題に対し、少しでも準備ができることを願っています。問題の“なぜ”を問うことを学び、批判的思考を持ち、“プロセス”を経ることで、たとえその時に成功しなくても、一般的には成功する方法を学ぶのです。私は、自分が教えた生徒たちに会う機会を、いつも楽しみにしています。

Q: For the students that graduate from this course, how would you like them to be in the future?

Mr. Suzuki: As with many of the other graduates that I have taught who have gone on into liberal arts universities, I hope they can be just a little more prepared for the challenges presented to them in 'the real world'. Learning to ask the 'whys' of issues, and being critical thinkers, going through the 'process' …even if they don't succeed, and in general, learning how to be successful. I'm always looking forward to the chance to catch up with students that I've taught.

最後にテキストを見せていただきましたが、その内容はとてもレベルが高く、深く考えることが求められるものでした。授業ではペアワークやグループワークを多用し、議論したり調べたりする過程を大切にしたいと、スズキ先生は物静かな、しかし熱意のこもった口調で語ってくれました。

ブレント・スズキ先生 高校レベルでの英語教育経験は約25年間。中でも帰国子女を対象にしたレッスンは15年以上にわたる。英検やTOEFLなど、生徒のニーズに応じたカリキュラム作成にも従事
※感染防止に十分配慮し、写真撮影時のみマスクを外しています

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