リアルドラゴン桜プロジェクト

学校法人 明徳学園相洋高等学校

Vol01
2021.4.30
【授業レポート】勉強は本当に役に立つ? 一度は抱く疑問への答えとは

相模湾が春の陽光にきらめく4月末、2021年度の第1回リアルドラゴン桜授業が相洋高校で行われました。

本年度のプロジェクトに参加するのは、特進コース選抜クラスの1年生と2年生、計45名の生徒たち。どの生徒も初めて受ける東大生講師の授業への期待を胸に、続々と教室に入ってきます。

そんな彼・彼女たちに東大生講師が語りかけた言葉とは? 授業に熱心に取り組んだ生徒たちの様子とともにレポートします。

東大生も、高1の頃は勉強が嫌いだった

「みなさんは勉強が好きですか? 嫌いですか? 10秒考えてどちらかに手を挙げてください」

本年度の第1回リアルドラゴン桜授業の冒頭で、このプロジェクトをけん引する東大生の1人である西岡壱誠講師は、生徒にこんな質問を投げかけました。

10秒後に手を挙げた生徒たちの答えは、どちらかというと「嫌い」が多め。すると、うんうんと頷きながら「そうだよね。僕はリアルドラゴン桜プロジェクトでいろいろな高校に伺っています。でもどこの高校でも、この質問をするとだいたいこういう結果になります」と西岡講師。

「勉強を好きになれない理由はさまざまだと思います。課題が多くて嫌になってしまったり、努力しても思うように成績が上がらず自分は勉強に向いていないのではと感じたり。中には、どうして勉強しなくてはいけないのか、その意味を見出せなくてやる気が起きない人もいるかもしれません」

まっすぐ前を見て、西岡講師の話を聞く生徒たち。「そう、そうなんだよね…」。そんな風に思っていたのかもしれません。

授業は続きます。

「さて、同じ質問を約200人の東大生にしてみました。結果は70%以上が『楽しい』という回答でした」

日本で一番の難関大学に通う東大生が「勉強は楽しい」というのは納得の結果です。しかし西岡講師は続けてこういったのです。

「ところが同じ東大生に『高校1年生の頃は勉強が楽しかったですか?』と質問すると、『楽しかった』という回答は30%以下まで減りました」

今、授業に参加している生徒と同じ年齢の頃には、東大生も勉強を楽しいと思っていなかった──。少し意外な話に、西岡講師を見る生徒の表情が変わります。

「ここで簡単に自己紹介しましょう。僕は高校3年生のとき、春の模試の結果が偏差値35でした。そこから自分を変えようとがんばって、2浪して東大に合格しました。だから、今みなさんが勉強を好きになれない気持ちも、東大生が勉強を楽しいという気持ちも、どちらもよくわかります」

初めて受ける東大生講師の授業。最初は緊張気味に見えた生徒たちも、「勉強が不得意だった」というエピソードに親近感がわいた様子。全員の視線がいっそう西岡講師に集中し、真剣に耳を傾けています。

そう、西岡講師は勉強もスポーツも苦手で、物事に積極的に取り組めない高校生でした。しかし当時の学校の先生に「君は自分で何もできないと思い込んでいる。そのままではずっと今のままだ。自分を変えたかったら、今の自分から一歩踏み出せ」と東大受験を勧められて一念発起。2浪の末、見事に東大に合格した経験を持っています。

その西岡講師が続けます。
「勉強を好きになれない気持ち、勉強が楽しくなる気持ち、この2つに実は大きなギャップがないことを僕は知っています。だから今、みなさんの前に立っているのです」

受験は団体戦。仲間の存在が、がんばり続ける原動力に

リアルドラゴン桜授業では、提示された問題を生徒が相談し合って考える時間もたくさん設けられています。問題は「普段飲んでいる牛乳はどこから来ている?」「青信号の色は緑なのに、なぜ青信号という?」など、身近で素朴な疑問が少なくありません。

西岡講師がこうした問いを投げかけるのは、何も気にせず素通りしてしまいそうな物事にもきちんと理由や背景があり、それを知るのは楽しいということを伝えるためです。

実際、考える時間を与えられるたびに、生徒はまわりの友達と活発に意見交換。印象的なのは、どの生徒も笑顔で生き生きとしていたこと。当たり前に受け止めていたからこそ、理由を考え、知ることを心から楽しんでいるようで、回答の時間には何人もの生徒が積極的に挙手して自分の考えを述べていきます。

授業後半になると、Slido(スライドゥ)というオープンチャットアプリを使った質疑応答も行われました。

相洋高校ではICT教育を推進しており、特進コース選抜クラスも全生徒にタブレットを配布。さまざまなシーンで活用しています。早速、生徒は手元のタブレットにSlidoをインストールし、Slidoの中の今回のためにつくったグループに匿名で参加。西岡講師から提示される質問や問題に対し、自分の意見を各自のタブレットから書き込みます。Slidoの画面は教室のプロジェクターにも投影されるので、書き込まれた意見を誰もがすぐに読むことができます。

この方法は、挙手をためらう生徒でも気軽に意見を言えて、スムーズに共有し合えることが大きな魅力。生徒は次々と意見を書き込み、どんどん増えていく仲間の書き込みにも興味津々。鋭い意見、ユニークな感想など、多様な書き込みがアップされるプロジェクターに見入っています。

授業中、西岡講師はこんな話もしてくれました。
「東大受験に失敗した頃を振り返ると、僕は友達が少なかったなと思います。でも、同じ志の友達ができてからは、つらくてもがんばろうと思えるようになりました。1人で孤独に努力し続けるのは難しいけれど、仲間がいればがんばれる。受験は団体戦という言葉がありますが、勉強を続けるには励まし合う仲間の存在が大切なのです」

問題を出すたびに生徒同士で相談する時間を取り、意見を共有しやすい環境を整える──。この授業スタイルにも、「仲間の存在の大切さ」という西岡講師の強いメッセージが込められているのです。

知識も、勉強法の習得も、社会で必ず役に立つ

西岡講師は東大での学びについてのエピソードも披露してくれます。あまり聞く機会のないリアルな体験談だけに、生徒も、とても興味深そうに聞き入ります。

例えば、東大の体育の授業での課題。西岡講師が参加した授業では、「人より速く走る方法」について論文提出を求められたといいます。この話に生徒は一瞬、「???」と不思議そうな表情を浮かべましたが、西岡講師は、この論文を書くにはさまざまな教科の知識を必要とすることを具体的に説明していきます。

一見すると身近なことに結びつかないように思える勉強も、「速く走る」というような、身近な課題を解決するために大いに役立つ──。具体的な例を挙げられ、「勉強は役立つ」をイメージできたようで、多くの生徒がうんうんと頷いています。

この例はスポーツ科学の領域ですが、同様に勉強は人々が安全・快適に暮らせる環境づくりや経済・文化の発展に役立つこともたくさんあり、社会課題の解決にもつながります。また、効率的な勉強法を習得すれば社会人になって仕事をする際にも役立つことを、西岡講師は例を挙げながら伝えていきます。

勉強すること・知ることで自分の世界が広がると、勉強が楽しくなる。知識は何かを成し遂げたいときに役に立つ。勉強の仕方で、仕事で活かせる物事の進め方も習得できる──。

「なぜ勉強するの? 勉強は社会に出てから役に立つの?」。多くの人が一度は思ったことがあるこの疑問に真正面から答えてくれた授業に目を輝かせていた生徒たち。授業が終わった彼・彼女たちの眼差しからは、今日の学びや気づいたこと、感じたことを忘れまいという強い意志が感じられました。

***

授業後、本年度の特進コース選抜クラス1年生の担任・阿部智之先生に抱負を伺うと「プロジェクトに参加する生徒の担任になり、私もワクワクしています。できることは何でも協力して生徒をサポートしていくつもりです」と頼もしい言葉。

特進コース選抜クラス2年生の担任・高木泰英先生は、過去2年間リアルドラゴン桜プロジェクトに参加し、卒業していった生徒たちを支えたプロジェクト経験者。「生徒の当事者意識やモチベーションを高め、彼・彼女たちがプロジェクトを大いに楽しめるよう見守っていきたいと思います」と、明るく語ってくれました。

西岡講師をはじめとする東大生講師が率いる新たな相洋丸に乗り込み、受験という荒波に船出した生徒たち。温かく力強い先生たちのサポートのもと、どのように成長していくかが楽しみです。

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