リアルドラゴン桜プロジェクト

自由ヶ丘学園高校

Vol04
2020.9.8
失敗を恐れずに壁を乗り越える
そんな大人になってほしい

9月上旬、自由ヶ丘学園高校の田中道久校長先生と西岡コーチが対談しました。本年度からリアルドラゴン桜プロジェクトに参加した理由や授業の感想、さらには教育論まで幅広いテーマでおこなわれた対談の様子をご紹介しましょう。

東大生の話を直接聞き、
刺激を受けられることが魅力

西岡コーチ:自由ヶ丘学園高校は、今年度からリアルドラゴン桜プロジェクトに参加しました。参加を決めた、もっとも大きな理由は何ですか?

田中校長先生:一番の理由は、生徒に強い刺激を与える機会になると判断したからです。本校はとても穏やかな生徒が多い男子校で、優しくてのんびりした生徒が大半です。これはもちろん、本校生徒の長所だと思っています。
しかし一方で、今後の社会は急速に、大きく変化していきます。ですから本校の生徒には、その変化を乗り越え、さらにリードしていくことができる力をつけてほしいと思っています。そのため、新しい気付きや刺激を生徒に与えたいと考え、学校改革を進めてきました。
リアルドラゴン桜プロジェクトは、最高学府に合格した東大生から、生で話を聞くことができます。これは、生徒にとって大きな刺激になると思い、参加を決めました。

西岡コーチ:東大生の話は、生徒にとって刺激があるということですね?

田中校長先生:その通りです。たとえばオリンピック選手は、誰からも尊敬されますよね。本校でもオリンピックに出場したコーチが、運動部で指導をしています。彼を見る生徒たちの目は違いますし、同じ話でも受け取り方が違います。それはオリンピックに出場するまでの多大な努力と、結果としてオリンピックに出場した実績があるからだと思います。
東大生も同じです。勉強に向き合う姿勢や気持ちの持ち方から具体的な勉強方法まで、その経験談のすべてが刺激になると思っています。

田中校長先生はリアルドラゴン桜プロジェクトのその他の長所として、一回だけの講演ではなく、授業という形で継続的に東大生から刺激を受けられる点をあげました。一度の講演ではその場限りの刺激になる可能性がありますが、繰り返し話を聞くことで身につくことを期待しているそうです。

無限の可能性があると信じ、
夢の実現に突き進んでほしい

西岡コーチ:校長先生は、生徒が東大生からどのような刺激を受けてほしいと思っているのでしょう?

田中校長先生:東大生は、高校生にとって遠い存在です。東京に住んでいても、出会う機会は少ない。自分とは違う世界の人だと思っている生徒が、ほとんどなのではないでしょうか。勝手に自分で壁を作り、近寄りがたい人だと思っている。ところが西岡コーチは人当たりもよく、フレンドリーに面白い話をたくさんする東大生です。
ですから、自分が作った東大生のイメージは、幻想であると知ってほしいですね。東大生の話を聞き、自分で壁など作らず、仮に壁があっても乗り越えてチャレンジすることの大切さを学んでほしいと思っています。

西岡コーチ:『自分で壁を作らない』という話は、とても共感できます。僕自身が、勝手に『自分なんてどうせ何をやってもできない』という壁を作っていた人間だったからです。幸い、僕の場合は高校時代の恩師が助言をしてくれて、結果として壁を乗り越えることができました。先生は『自分の周りには、“なれま線”という線がある。小さな頃にはその線は遠くにあるが、成長するとどんどん諦める事が増え、その線が体のすぐ近くを囲ってしまう。その線は、自分が勝手に作っている幻想だ。だから、諦めるな』と言ってくれたのです。このエピソードは、リアルドラゴン桜授業の冒頭で、必ず話をしています。

田中校長先生:すばらしい話ですね。まさにそのとおりだと思います。こうした体験談を聞くことができる点に、価値があるのではないでしょうか。

西岡コーチ:自分で壁を作るという点では、社会の変化も大きいのではないかと思っています。現在は誰でもすぐに情報を得られるので、たとえばこの偏差値でこの大学合格は難しいなどの結果が、すぐにわかってしまいます。実際は、その時点での合格の可能性に過ぎないのですが。このような社会の変化により、夢を持つ生徒が減ってきているのではないでしょうか?

田中校長先生:生徒が情報を得て、現実的になっているのは事実です。昔は自分の能力には関係なく、将来の夢を持つ生徒が多かった印象です。現在は、能力があるかもしれないのに夢を見ない。実際には一人ひとりに、違う能力があるのですが。その能力を引き出すのが、教師の力だと思っています。ですからティーチングではなくコーチングが重要になってきていますし、本校でも力を入れています。
社会的な影響も大きいと思います。大人でも、失敗を恐れる人が増えていますよね。失敗から多くのことを学べるという西岡コーチの言葉は、まさにそのとおりだと思います。社会に閉塞感があるからこそ、教育がしっかりしなければならないのではないでしょうか。教育には、時間がかかります。誰でも、先生から言われた言葉がその時に理解できなくても、後で意味がわかったという経験があるかと思います。ですから私達は信念を持って、生徒に言い続けることが大切だと信じています。繰り返しますが、リアルドラゴン桜授業も趣旨は同じで、だからこそ意義があるのです。

予想以上に大きかった
先生への好影響

西岡コーチ:リアルドラゴン桜プロジェクトによる、生徒の変化に対する期待はよくわかりました。今後もがんばります。それ以外に、期待や要望はありますか?

田中校長先生:ぜひ、違うタイプの東大生にも授業をしていただきたいと思っています。さきほど、人はそれぞれ違う能力があるとお話しました。置かれている環境もさまざまで、実際にリアルドラゴン桜授業を受けている本校の生徒の状況も、多岐にわたっています。違う経験をした東大生の話を聞いて、正解は一つではないことを感じてほしいのです。

西岡コーチ:そのとおりですね。私のように偏差値35からスタートしたケースは、東大生の中でも例外なのではないかと感じる生徒もいると思います。僕以外の東大コーチ陣には東大模試で1位をとった人もいますし、部活と勉強を両立した人、地方の高校で情報が少ない中頑張った人、塾や予備校に通わずに工夫して勉強した人など、さまざまな異なる経験をした人がいます。今後、そのような人の話もできるように考えていきます。

その他に、リアルドラゴン桜プロジェクトの影響が何かあれば教えて下さい。

田中校長先生:生徒だけでなく、先生にとても良い影響がありました。たとえばオンライン授業の進め方です。本校ではICT教育に力を入れていたため、4月の緊急事態宣言が出された直後からオンラインでホームルームをおこなっていました。5月には録画の映像ではなく、双方向でのオンライン授業を開始し、6月の分散登校時には半数は教室で、半数は自宅からオンラインで同じ授業を受けるという、ハイブリッド型の授業を行いました。かなり早い対応ができたと自負しており、これは学びを止めないという意思のもと、先生が努力した結果だと思います。
先生はオンライン授業の進め方も研究し、工夫してきました。どのようにすればうまく伝わるか、先生同士で会話している姿もよく見かけます。リアルドラゴン桜授業は、そんな先生にとっても、非常に参考になるという声が上がっているのです。

西岡コーチ:ありがとうございます。具体的にどのような点が参考になったのでしょう?

田中校長先生:どのように伝えると伝わりやすいのかが、非常によく考えられていると思います。同じ話でも、伝え方によって伝わり方が違いますよね? 東大生は、その点が上手です。たとえば東大生が、授業の最初に少しゲームの話をしたり、途中で冗談を言ったりしたときのことです。私が驚いたのは、生徒の反応の良さでした。生徒が興味を持つ話からすっと入る。これが上手だと思っています。聞き手の状況にあわせて、臨機応変に対応しているのもわかりました。先生にリアルドラゴン桜授業を見てくださいとは言っていませんが、授業を見て研究している先生はたくさんいます。特に若い先生は、変わってきていますね。これは想定外の、良い影響でした。

最後に校長先生は、こう語りました。
「私が高校生の時にこのような授業があったら、絶対に受けたかったと思っています。これほど貴重で刺激を受けられる授業は、そう多くはありません。リアルドラゴン桜授業はコロナ禍の影響で、現在はオンラインでの実施です。状況が好転した時には、本校の教室で“リアル”なリアルドラゴン桜授業ができるといいですね。その日が来ることを楽しみにしています」。

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